「心」と「からだ」のリハビリテーションをする作業療法士は、どのような場所で働いているのでしょうか?
本記事では、作業療法士の働く場所について解説します。
就職先の特徴や選び方も紹介しますので、ぜひ就職先選びの参考にしてください。
作業療法士の就職先ランキング
日本作業療法士協会が公開しているデータをもとに、作業療法士の就職先を見ていきましょう。
就職先ランキング | 作業療法士協会会員数 | 割合 |
---|---|---|
1.病院 | 35,041 | 56.3% |
2.介護施設 | 8,421 | 13.5% |
3.養成校 | 1,483 | 2.4% |
4.児童福祉施設 | 1,238 | 2.0% |
5.障害者施設 | 551 | 0.9% |
その他 | 15,560 | 24.9% |
参考:日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」
作業療法士の就職先ランキング1位は、病院です。
全体の半分以上は病院へ就職していますが、近年では病院以外で活躍する作業療法士も増えています。
作業療法士の主な就職先7選
ここからは、作業療法士の主な就職先7選を解説します。
- 病院
- 介護施設
- 児童福祉施設
- 障害者施設
- 特別支援学校
- 養成校
- その他
それぞれの特徴を見ていきましょう。
①病院
作業療法士の就職先で一番多いのが、病院です。
一般病院やクリニック、精神病院などで働いています。
一般病院
一般病院では、急性期や回復期、維持期の患者を対象にリハビリを提供します。
それぞれの病期における、作業療法士の役割は以下の通りです。
病期 | 作業療法士の役割 |
---|---|
急性期 | ・発症後、または術後間もない患者を担当する。 ・リスク管理を徹底しながら、一人ひとりに合わせた機能改善を図る。 |
回復期 | ・病気や怪我の状態が安定している患者を担当する。 ・社会生活復帰に向けたリハビリや退院後のフォローまで、幅広く支援する。 |
維持期 | ・その人らしい生活を送れるよう、過ごす場や仲間づくりの場を提供する。 ・継続的な支援をしていく。 |
作業療法士は、退院後の生活を見据えて、患者の精神面・身体面に寄り添いながら支援していきます。
クリニック
クリニックでは、外来患者への短期的な介入が中心となります。
整形外科クリニックでは、上肢の機能回復訓練を中心に行い、小児発達支援クリニックでは、発達障害児への支援を中心に行うのです。
一般病院と比較し小規模であるため、患者との関係性を築きやすく、きめ細かな対応ができます。
精神病院
精神病院では、統合失調症やうつ病、認知症など精神疾患を持つ患者の社会復帰支援をします。
生活リズムの改善や対人交流の促進、作業活動を通じた症状の安定化を図るのです。
個別療法やグループ療法を行い、患者の興味や能力に合わせた活動を提供します。
②介護施設
作業療法士は、以下のような介護施設でも活躍しています。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- デイサービスセンター
それぞれの特徴を見ていきましょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームでは、長期的な視点で利用者の生活の質(QOL)向上を目指します。
認知症や身体機能の低下した高齢者に対し、日常生活動作の維持・改善を図るとともに、残存機能を活かした活動を提案するのです。
また、介護職員や看護師と連携し、利用者の個別ニーズに応じたケアプランの作成にも関わります。
利用者が安心して楽しく過ごせるよう、生活の質を保つことが作業療法士の役割です。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は、病院から退院した後に利用する、自宅での生活に向けた中間施設です。
ここで、作業療法士は、在宅復帰を目指す高齢者のリハビリを担当します。
食事や排泄、入浴などの基本的な生活動作はもちろん、調理や洗濯、掃除などの家事動作の訓練もするのです。
また、他職種と連携し、認知機能の維持・向上を目的とした活動や、余暇活動の提案もしていきます。
デイサービスセンター
デイサービスセンターは、介護保険法で要支援、要介護と認定された方が通う施設です。
作業療法士は、ここで利用者の身体機能や認知機能の維持・向上を目的とした個別訓練や集団活動を行います。
また、創作活動や趣味活動の提供を通じて、社会参加の機会を作るのも作業療法士の役割です。
③児童福祉施設
児童発達支援センターや障害児入所施設などの児童福祉施設も、作業療法士の職場の一つです。
作業療法士は、感覚統合療法や認知行動療法などを用いて、子どもの発達段階に応じた介入をします。
また、子どもだけではなく保護者への指導や学校との連携も重要な業務です。
保護者へアドバイスをしたり、学習会を開いて知識の普及をしたりします。
④障害者施設
障害者施設で働く作業療法士は、身体障害や知的障害、精神障害など、様々な障害を持つ利用者の自立支援と社会参加促進を目指します。
利用者一人ひとりの特性に合わせて、ADLの自立度向上や就労支援、環境調整、余暇活動の提案など、幅広い支援をするのです。
作業活動を通じて、身体機能や認知機能の維持・向上を図るとともに、生きがいや自己実現の機会を提供します。
⑤特別支援学校
特別支援学校では、発達障害や身体障害がある子ども達を支援します。
身体機能やコミュニケーション能力の向上、感覚統合、認知機能の発達を促す活動を提供するのです。
また、教員や他の専門職と連携し、個別の教育支援計画の作成にも携わります。
⑥養成校
作業療法士養成校で働く作業療法士もいます。
養成校の教員として働くための条件は、以下の通りです。
・作業療法士として5年以上業務に従事している
・厚生労働省が指定した「専任教員養成講習会」を修了している、または、大学・大学院において教育学に関する科目を4単位以上修めている
教員となった作業療法士は、講義や実習指導を通じて、作業療法の理論と実践を学生に教えます。
学生の成長を支援しながら、自身も常に学び続ける姿勢が重要です。
⑦その他
作業療法士は、保健所や市役所などの行政機関で働くことも可能です。
行政機関では主に、福祉・介護政策の企画立案などに携わります。
他にも、一般企業で障害者雇用の人材採用に携わったり、職業訓練施設で障害を持つ方が社会復帰できるよう知識・技術面をサポートしたりするのも、作業療法士の仕事です。
作業療法士の就職先の選び方
続いて、作業療法士の就職先の選び方を解説します。
- どのようなリハビリをしたいか
- 職場の雰囲気は合っているか
- 教育・研修制度は整っているか
- 給料はどうか
上記の視点を参考に、就職先を見つけてください。
どのようなリハビリをしたいか
まずは、どのようなリハビリをしたいか考えましょう。
作業療法士の領域は、大きく「身体障害領域」「精神障害領域」「発達障害領域」「高齢期領域」の4つに分けられます。
領域により、業務内容やリハビリの考え方が異なるため、どのようなリハビリをしたいか就職前に考えておくのは重要です。
職場の雰囲気は合っているか
職場の雰囲気が自分に合っているかも、就職先を選ぶ上で重要です。
患者や利用者への接し方はどうか、職員同士のコミュニケーションは良好かどうかを、施設見学時に確認しましょう。
教育・研修制度は整っているか
初めて作業療法士として働く際に重要視したいのは、教育・研修制度が整っているかどうかです。
新人の頃に学んだ技術や知識は、作業療法士としてキャリアを積むための土台となります。
そのため、各病院・施設の求人やホームページ、SNSなどから、教育・研修制度について確認しておきましょう。
給料はどうか
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の平均年収は432万円です。
内訳を以下にまとめました。
月給 | 年間賞与 | 年収 |
---|---|---|
30万900円 | 71万4,400円 | 432万5,200円 |
参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
続いて、経験年数別の給与データを見ていきましょう。
経験年数 | 月給 | 年間賞与 |
---|---|---|
0年 | 24万8,600円 | 7万7,000円 |
1~4年 | 25万4,100円 | 63万8,200円 |
5~9年 | 27万7,400円 | 68万7,700円 |
10~14年 | 30万6,300円 | 79万7,800円 |
15年以上 | 33万8,500円 | 95万2,900円 |
初任給が低すぎる職場へ入職すると、その後も大きな給与アップは見込めません。
そのため、作業療法士の求人情報を確認する際には、上記に記載した「経験年数0年の月給24万円」を一つの基準として比較しましょう。
作業療法士の就職のポイント
最後に、作業療法士の就職のポイントを紹介します。
- 早めに情報収集する
- 積極的に職場見学する
- 国家試験へ向けて学習する
以上のポイントを踏まえて、就活を有利に進めましょう。
早めに情報収集する
一般的に、作業療法士の就活は、最終学年の実習終了のタイミングから始まります。
ただし、人気のある求人や募集人数が少ない行政機関の求人などは、早めに求人募集を締め切ることもあるのです。
募集時期を逃さないためにも、早めに求人関係の情報収集をしましょう。
募集情報は、各病院・施設のホームページや求人票などから確認可能です。
また、希望勤務先に先輩が勤めている場合は、先に先輩から求人情報を伝えてもらう方法もあります。
積極的に職場見学する
就活では、積極的に職場見学しましょう。
職場見学することで、求人票には載っていない人間関係や患者・利用者への対応などを知ることができます。
職場見学する際は、実際に働いている職員へ質問して、生の声を聞くようにしましょう。
国家試験へ向けて学習する
作業療法士国家資格を取得しなければ、作業療法士として働けません。
そのため、国家試験へ合格できるよう、しっかりと計画を立てて学習しましょう。
国家試験の学習は、一人で行うよりも複数人で行った方がモチベーションを保てるため、おすすめです。
まとめ
本記事では、作業療法士の働く場所について解説しました。
病院で働いている作業療法士が多い傾向にありますが、近年では病院以外で活躍している作業療法士も増えています。
就職先を選ぶ際は、「どのような働き方をしたいか」「教育・研修制度は整っているか」「給料はどうか」を調べましょう。
また、実際に就職希望先へ見学に行き、自分の目で職場の雰囲気を確かめることも重要です。