まだ1年目だけど作業療法士を辞めたいな。
でも、高い教育費を出してくれた親に迷惑はかけたくない…。
このように悩んでいる方もいるでしょう。
本記事では、作業療法士(OT)を辞めたいと思う理由と対処法を解説します。
私も作業療法士1年目のときに、「作業療法士を辞めたい」と思うことがありました。
しかし、なんとか思い留まり、7年間同じ職場で勤めた経験があります。
私の経験も踏まえて解説しますので、現在「作業療法士を辞めたい」と考えている方は、一度本記事に目を通してみてください。
作業療法士を辞めたい理由とは
作業療法士が辞めたいと思う主な理由は、以下の通りです。
- 作業療法士に向いていないと感じる
- 仕事にやりがいを感じられない
- 体調不良が続いている
- 患者対応が辛い
- 給料が安い
- 人間関係が悪い
- 労働環境が悪い
- 福利厚生が充実していない
- 育児ができない
一つずつ詳しく見ていきましょう。
作業療法士に向いていないと感じる
主に患者さんと関わった際に、作業療法士に向いていないと感じる方がいます。
例えば、患者さんの些細な変化に気づきにくい、あるいは喜びを感じられない自分に気づいたときに「作業療法士に向いていない」と感じるでしょう。
また、患者さんの感情の変化や非言語的なサインを読み取ることが苦手で、適切な距離感やコミュニケーションが取れないと感じるときにも、適性への疑問が生じます。
他にも、治療プログラムの立案や実施において、創造的なアイデアが浮かばない、または臨機応変な対応が苦手だと感じることもあるのです。
患者さんの状態や目標に合わせて活動を組み立てていく作業療法の特性上、この点で困難さを感じることは大きな課題となります。
仕事にやりがいを感じられない
作業療法士に限りませんが、仕事にやりがいを感じられないと、仕事を辞めたいと思うでしょう。
患者さんの回復や生活の質の向上に貢献したいという当初の志と、現実の業務との間にギャップがあると、仕事にやりがいが感じられません。
また、日々の業務に追われ、「十分な治療時間が確保できない」「目に見える成果が出にくい」場合にこのような感情を抱きやすくなります。
特に、マンパワー不足により事務作業に追われ、本来の治療に時間を割けないというケースも少なくありません。
体調不良が続いている
体調不良が続いていると、「仕事を辞めたい」と感じるでしょう。
作業療法士の仕事は、身体的にも精神的にも負担が大きいです。
患者さんの移乗介助や治療時の姿勢保持など、身体的な負担が重なり、腰痛や肩こりなどの症状を引き起こすことが多くあります。
また、常に緊張状態で患者さんに関わる必要があることから、精神的なストレスも蓄積されやすく、不眠や胃腸の不調といった症状につながることもあるのです。
特に新人のときは、右も左も分からずに気を張りますよね。
実際に私も気を張りまくっていました。
患者対応が辛い
患者さんからの過度な期待や要求、あるいは急激な症状の変化への対応が辛いと感じる作業療法士も多いでしょう。
特に、認知症の方や精神疾患のある方への対応は難しく、コミュニケーションの取り方や適切な距離感の保ち方に悩むこともあります。
時には、暴言や暴力的な行為に遭遇することもあり、心理的な負担が大きくなるのです。
私は精神科の病院に勤めていました。
患者さんが病気により、暴言や奇声をあげている様子を何度も見たことがあります。
正直、新人のときは衝撃的な光景でした。
給料が安い
給料が安いのも、作業療法士が仕事を辞めたいと思う理由の一つです。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の平均年収は432万円です。
内訳を以下にまとめました。
月給 | 年間賞与 | 年収 |
---|---|---|
30万900円 | 71万4,400円 | 432万5,200円 |
続いて、経験年数別の給与データを見ていきましょう。
経験年数 | 月給 | 年間賞与 |
---|---|---|
0年 | 24万8,600円 | 7万7,000円 |
1~4年 | 25万4,100円 | 63万8,200円 |
5~9年 | 27万7,400円 | 68万7,700円 |
10~14年 | 30万6,300円 | 79万7,800円 |
15年以上 | 33万8,500円 | 95万2,900円 |
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、日本人の平均年収は458万円です。
作業療法士よりも20万円多いため、「もっと年収の高い職種に就きたい」と思う方もいるでしょう。
人間関係が悪い
医師や看護師、他の医療スタッフとの連携の難しさを感じる作業療法士もいます。
他職種連携が必要な医療現場において、職種間の考え方の違いやコミュニケーション不足から、チーム医療がうまく機能しないことがあるのです。
病棟の看護師さんはいつも忙しそうなので、どのタイミングで話しかけるべきか、いつもチャンスを伺っていました。
また、同じ作業療法士間でも治療方針の違いや業務量の偏りなどから軋轢が生じることがあります。
労働環境が悪い
慢性的な人手不足による過重労働や、休憩時間が十分に取れないなど労働環境が悪いと、「作業療法士を辞めたい」と思うかもしれません。
作業療法士の主な一日の流れを、「病院勤務」と「介護老人保健施設勤務」に分けて紹介します。
【病院勤務の場合】
時間 | 内容 |
---|---|
8:30〜 | 【ミーティング・業務準備】 作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などがリハビリテーション室に集合し、一日のスケジュールや患者情報、連絡事項を共有します。 |
9:00〜11:30 | 【リハビリテーション】 リハビリテーション室や病室で、リハビリテーションを提供します。 特に急性期病院では、患者の状態を適宜病棟の看護師に聞いたり、カルテ情報を見たりしながら慎重にリハビリテーションをします。 |
11:30〜12:00 | 【記録】 リハビリテーション時の患者の様子やリハビリ内容を、詳細にカルテへ記入します。 |
12:00〜13:00 | 【昼食】 食堂や休憩室で昼食をとります。 |
13:00〜15:00 | 【リハビリテーション】 午前と同様、リハビリテーションをします。 |
15:00〜16:00 | 【カンファレンス】 一人の患者に対し、月に一度他職種で集まりカンファレンスをします。 そこで、患者の状態や治療方針を話し合います。 |
16:00〜17:00 | 【リハビリテーション】 カンファレンス終了後、再びリハビリテーションをします。 |
17:00〜17:30 | 【記録】 午後に行ったリハビリテーション時の患者の様子やリハビリ内容を、詳細にカルテへ記入します。 |
17:30 | 【帰宅】 |
【介護老人保健施設勤務の場合】
介護老人保健施設は、「老健」とも呼ばれています。
要介護者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すための施設です。
時間 | 内容 |
---|---|
8:30〜 | 【ミーティング・業務準備】 作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などがリハビリテーション室に集合し、一日のスケジュールや患者情報、連絡事項を共有します。 |
9:00〜10:00 | 【入所者へのリハビリテーション】 入所者に対し、個別リハビリや集団リハビリを実施します。 |
10:00〜12:00 | 【通所リハビリテーション】 通所している利用者に対し、個別リハビリや集団リハビリを実施します。 |
12:00〜13:00 | 【昼食】 食堂や休憩室で昼食をとります。 |
13:00〜15:00 | 【入所者や通所している利用者に対しリハビリテーション】 午前同様、リハビリテーションを実施します。 |
15:00〜16:00 | 【ケアカンファレンス】 他職種が集まり、利用者の状態把握や情報交換をします。 |
16:00〜17:00 | 【リハビリテーション】 カンファレンス終了後、再びリハビリテーションをします。 |
17:00〜17:30 | 【記録】 一日のリハビリテーション内容をカルテへ記入します。 |
17:30 | 【帰宅】 |
作業療法士は、リハビリ業務と並行して事務作業もしなければいけません。
事務作業が就業時間内に終わらない場合は、残業する必要があります。
また、リハビリ室やリハビリ道具の不足、空調設備の不備など、物理的な労働環境の問題に悩んでいる方もいるでしょう。
福利厚生が充実していない
研修制度や資格取得支援が不十分であったり、休暇が取りにくいなど福利厚生が充実していないと「仕事を辞めたい」と思うはずです。
研修制度や資格取得支援が不十分だと、専門性の向上や自己研鑽の機会が限られてしまいます。
また、病院や施設によっては社会保険や退職金制度が整備されていないケースもあるのです。
育児ができない
育児ができない問題は、特に女性作業療法士にとって深刻な課題です。
不規則な勤務体制や残業の多さにより、子育てとの両立が困難になることが少なくありません。
また、育児休暇の取得や時短勤務の制度はあっても、実際の現場では人手不足を理由に利用しづらい雰囲気があったり、復帰後のキャリアパスが不明確であったりするのが現状です。
もちろん全ての職場が当てはまるわけではありませんが、育児と仕事の両立に困難さを感じている作業療法士は多くいます。
作業療法士を辞めたいと思ったときの対処法
続いて、作業療法士を辞めたいと思ったときの対処法を解説します。
- 問題を解決できないか分析する
- 活動の場を変える
- 作業療法士以外の仕事に転職する
作業療法士を辞めたいと思った方は、ぜひ参考にしてください。
問題を解決できないか分析する
作業療法士を辞めたいと思ったら、まずは問題解決できないか分析しましょう。
具体的に、問題点とその改善策の一例を解説します。
問題点 | 改善策 |
---|---|
仕事にやりがいを感じない | ・自分が何にやりがいを感じるのか考える ・職場内で異動する |
人間関係が悪い | ・職場内で異動する ・相談相手を作る ・転職する |
労働環境が悪い | ・一日の仕事のスケジュールを再調整する ・上司へ相談する |
いずれも一人で抱え込まず、相談できる相手を探すことが重要です。
私が辛かったときに上司が相談に乗ってくれました。
悩みを聞いてくれる人がいると、「自分の味方がいる」と思えて、心が楽になりますよ。
活動の場を変える
活動の場を変えると、「作業療法士を辞めたい」という気持ちが少なくなっていくかもしれません。
具体的に、作業療法士が活躍できる場所を紹介します。
分野 | 場所 |
---|---|
医療 | 総合病院、リハビリテーション病院、精神科病院、クリニックなど |
介護 | デイケア、デイサービス、介護老人保健施設、訪問リハビリテーション、訪問看護ステーションなど |
福祉 | 放課後等デイサービス、児童発達支援センター、就労移行支援事業所、生活介護事業所など |
保健 | 地域包括支援センター、保健所、精神保健福祉センター、地方自治体など |
教育 | 特別支援学校、教育委員会など |
労働 | ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地方自治体など |
司法 | 刑務所、医療刑務所、保護観察所など |
現在「作業療法士を辞めたい」と思っている方は、活動の場を変えることもおすすめです。
作業療法士以外の仕事に転職する
思い切って、作業療法士以外の仕事に転職するのも一つの方法です。
作業療法士の資格が活かせる仕事を、以下にまとめました。
- 医療事務
- 医療秘書
- 健診センターの受付
- 発達障害児施設の児童指導員
- リハビリ職向けのセミナー講師
- パーソナルジムのトレーナー
- 医療系のWEBライター
作業療法士は資格の更新がないため、一度他の仕事へ転職しても、再び作業療法士として働けます。
まとめ
本記事では、作業療法士(OT)を辞めたい理由とその対処法について解説しました。
作業療法士を辞めたい理由は人それぞれです。
辞めたいと思った場合は、まずその問題を解決できないか分析しましょう。
それでも「辞めたい」気持ちがなくならないなら、活動の場を変えたり、思い切って作業療法士以外の仕事に転職したりするのもおすすめです。